17.スタック襲撃作戦1
南の前哨基地を担うだけあって警備は厳重で、正門の5人の守衛に加えて定期的な巡回。
そして砲台では常に数人の射手が待ち構えている。
普段はオオカミなどの害獣を駆除することが多いようだが、大規模な戦闘は近年行われていないらしい。
「あんまり時間はかけらんねえな……」
手っ取り早く荒らすとすれば、とりあえずこっそり正門から忍び込んで適当にパラディンを拉致ってボコボコにして捨ててやればいい。もともと賞金首でそこそこ名前は通ってる俺の事だ、聡いヤツがいれば俺の顔を見ただけで気づくだろう。
俺は腹を決めると、闇夜に乗じて正門を駆け抜ける。
「何者だ!? くそっ追え!!」
っと、気づかれたか。隊長格の奴が俺の隠密に気が付いて声を挙げた。
俺は手早く建物の陰に身をひそめると、近場で鍵の掛かっていない小屋に忍び込んだ。そこは都合よく二人のパラディンの住居だった。
「――になったそう……ぐっ」
まだ気づいてない男の背後に立った俺は、そのまま首元に一撃を加えて昏倒させ、武器を奪い取った。突然の事にもう一人の男は一瞬の膠着ののち、すぐに俺に向かって吠えた。
「貴様!? 聖なる騎士に手を挙げるとは!!」
「ヴァガボンド様にとっちゃ獲物でしかねえよボケが」
「なんだと!!貴様があの!?」
「じゃあな!」
振り下ろされる十字剣が俺の体を掠めた。数多のスケルトンと女たち、シェクやハイブを切り裂いただろう聖国の騎士を象徴するこの剣が、俺が倒すべき相手かのような錯覚を覚えた。
それなりに重さのある剣を軽々と扱うパラディンの技量は決して低くはない。侮れる相手じゃないことは分かっているが、余裕をもって回避できる程度には鍛えてきた。
「ぬう!? 逃がすか!」
闇夜に紛れるように、俺は小屋を飛び出して再び夜の町へとその身を翻した。
熱い夜が、始まる。