19.奴隷解放戦線
スタックだけに限らず、都市の周辺には奴隷の収容所が設けられている。
領土内には採掘や農地を目的とした収容所として機能しているのだが、俺はスタックから最も近いオクラン・ガルフの採掘場へと足を向けた。
徒歩にしておよそ半日を費やし、なだらかながらゴツゴツとした岩場に囲まれた採石場へとたどり着いた俺は、まずは一日を費やして採掘場の動きに注視する。こうした作業場は概して一日の動きが作業化していることが多い。一日もあれば大体どんな警備体制なのかも含めて、奴隷を開放するタイミングもつかみやすい。
少し離れた岩場から、そっと様子をうかがう。
「……指揮官クラスが数人居るな。雑兵は10名足らずってところか?」
朝日が昇るとほどなくして奴隷と共に一人の看守が現場へと現れ、あとは奴隷が作業をしている間は定期的に監視が入れ替わっていくようだ。
監視は二人体制で行われるが、例外的に高位っぽいパラディンが見回りに来るときは一人の瞬間がある。当然だが、俺はその瞬間を狙って高位パラディンの背後から忍び寄り、鍛え上げた暗殺術でヤツの意識を刈り取った。
「……!」
タイミングよく門前でオオカミどもが襲撃をしてくれているお陰で、倒れた高位パラディンの装備をまるまるはぎ取って着替えた俺は、茫然と成り行きを見守っていた二人の奴隷の足鎖を外してやった。
「な、なにを!?」
「ぉぉぉおお、俺は自由だ!!」
対照的な反応を見せる二人は、やがて歓喜の声と戸惑いの声に別れた。どこまでも奴隷としての生き方に染まってしまったヤツってのは、自由に生きることがもう叶わないヤツだ。自分で自分の運命を切り開く勇気を持たないヤツは、俺の仲間には必要ない。
「だ、だめだ。私は逃げるわけにはいかない……」
そうやって首を振った女は、そのまま採石場へと戻っていく。残された俺はともかく、少し不安そうな顔を滲ませるもう一人の男。
「……いくぞ」
「ああ……」
そんな短いやり取りの中に、俺は男の中に確かな決意を感じた。その予感はそのままthehubにたどり着く直前に行動へと移される。
「俺は……奴らを……許せない!」
「……」
「あんたは、いや、貴方は奴らに勝てるんだろう!?俺を、俺を仲間に加えてくれ!!」
「……いいぜ」
「ほ、本当か!?」
「ああ、だが……」
望んでいたことではあるが、俺はさらに言葉を加えた。
「お前も勝つんだ」
――そうして繰り返し開放の戦いを繰り返した俺たちは、あらたな勢力として名を残せるほどの組織へと成長を始めた。
余談だが、俺の賞金額は4万5千になっていた。