33.因縁の終結1
俺がハブからスクインへと向かっていると、途中でレーンたちと合流することになった。別に示し合わせていたわけじゃないが、こんな偶然もあるもんだ。
互いの無事と健闘、レーンから軽い手合わせをうけつつスクインへ向かって南下していると、スクイン方面から人影が見えた。
レーンたちが粗方の盗賊を討伐していたことは耳にしていたが、また出たのかと思って身構えていると、現れたのは俺が開放した元奴隷の一人のハボックだった。
「ヴァガボンドッ!! た、たいへんだ!!」
半日以上全力で走り続けていたのだろう。
息も絶え絶えだというのにハボックは必至になって俺に事の顛末を教えてくれた。
「しっ、審問官の連中がハァッ! ハァッ! 町を!!」
「ヴァーグ!」
鋭い声がレーンの口から放たれた。
「ああ、俺は先に行く!」
「わしも行きましょうかの」
足の速いリーフと手ばやく手荷物をまとめると、俺は続けて指示を飛ばす。
「レーン、カン、ルカ、オロン。ハボックを連れてなるべく早く追いつけるように来てくれ。無理はしなくていい」
くるりとスクインの方へと向きを変えると、力強く地面を蹴りだした。
……さすがはリーフ、俺に遅れずについてこられるのはリーフくらいのモンだ。
耳を叩く風音に交じって、リーフが土を蹴る音が聞こえてくる。
ハボックの話を聞く限りでは、まちがいなくアイツも来ている筈だ。
「間にあえよ……」
走り続ける俺たちの頭上には、ふたつの月が静かに浮いていた。