36.死の大地
大陸南西部に広がる峻嶮な山岳地帯。
それが、ヤツの住処だ。
この地域は、中心部とされる遺跡と巨大なクレーターあたりに生息する多数の蜘蛛に支配された場所だ。
一歩間違えばあっという間に蜘蛛に囲まれて生きたまま丸かじりにされちまう、安全な場所もあるんだが、そういうところには賞金稼ぎどもがキャンプを張って待ち構えている。
幸い、そいつらの目的はバグマスターだ。
出てきたところをタコ殴りにしてやろうと待ち構えている。ま、大体が返り討ちにされているようだが。
鉄交じりの赤い雨が降る。
「この先にバグマスターの住む塔がある。今は蜘蛛共が活発だから時期を見て動くのが俺らの常識だ」
そう話すのはそんなバグマスターを狙う賞金稼ぎの一人で、案内を頼んだ男だ。普段は仲間と蜘蛛を狩った素材で生計をたてたり、こうして案内することで日銭を稼いでいると聞いても居ないのに話してくれた。
こいつらの生活は楽じゃない。
バグマスターの賞金は10万キャッツだが、精々弁当100食分だ。
そう考えれば、少し東に向かえば気が狂ったように暴れまわっているビークシングを狩りに行く方がいくらかはマシだとは思うんだが、そのあたりはコイツの矜持に反するようだ。
「助かった、ここからは俺たちだけで充分だ」
「そうか……。ま、精々いい結果を祈ってるぜ」
途中まではホッブスも着いてきていたが、どうやら目的の化け物は見当たらなかったらしくてとっとと帰った。
農園も順調だから、他の奴らに任せてそこらへんで道すがら聞きこむとか言ってたな。
「さて、いくか」
案内役の男と別れた俺たちは、いよいよ荒涼とした大地へと、バグマスターの庭へと足を踏み入れるのだった。