40.蜘蛛人と戦の民
蜘蛛が巣食う山岳地帯を西へ抜け、海岸沿いを北へ。
途中で数体の蜘蛛や野犬に出くわしながらも、三日程度でアドマグへとたどり着いた。
シェク王国の拠点へ着くと、その足でバヤンに顔を出す。
俺の顔を見るなり、バヤンはうらんげな視線を俺に向けた。その視線が俺の抱える男に向くなり、あまり変わることのなかった表情に微かな驚きを見せる。
「ようバヤン。土産をもってきたぜ!」
「お、おい、まさか……」
「……骨顔か」
放り投げられたバグマスターが、虚ろな瞳でバヤンを見止めて呟く。自分の足元へと転がってきたバグマスターの姿に腰かけていた椅子から立ち上がり、かすかな震えとともにバヤンは言葉を紡いだ。
「お前の行いは我らの歴史と共に英雄としてその名を残すだろう……、おおおお!」
因縁についてはバグマスター本人の口からきいてる。そんなバヤンの姿も理解できる俺は、黙って見つめる以外に手段を知らない。やがて我を取り戻したバヤンは、手早く身近にいた不敗の五忍の一人に声を掛ける。
俺を拝みかけていたソイツも、バヤンの指示をうけて慌ててバグマスターをどこかへ連れて行った。
「……ストーンゴーレムに会ってくれ。今は上でお前を待っているはずだ」
一通りの手続きを済ませたバヤンが俺に言った。
なんとなく複雑な心境で見ていた俺も、ようやくいつもガミガミうるさいストーンゴーレムもおとなしくなるのかと考えながら、バヤンに促されるまま彼女の元へと向かった。