14.絶壁都市スクイン
俺たちはTheHubの南、Shekの町スクインに拠点を移すことにした。
以前訪れた王都アドマグでの情報により、大陸のおおまかな情報を手に入れていた俺たちは、南の町がShekが納めている町であることを知っていた。
以前ちょっと顔を出したときにいきなり侍姿の衛兵が追っかけてきたから、すわHNの領域だったか!?と勘違いしていたが、どうやら違っていたようだ。
人間側のHN、ハイブ、そしてシェクの三つ巴ともいえる場所に立っていたのがTheHubって事だ。
TheHubにあった廃墟のひとつが教団が使ってた施設の跡地だったんだが、そこで仕入れた情報(メモ)の裏にはこういう情勢が関係してたって意味があったんだよな。
勘違いしてたこともマズかったんだが、むしろ……
「あんなところに居たらそりゃ何もできねえよな」
HN潰そうってのに最前線にいちゃどうにもならねえ。
そう思った俺たちは、レーンの勧めもあってシェクの奴らとつるむことにしたわけだが。
人間族はHNの影響もありやや肩身が狭いが、武侠に生きる種族ってのもあって今の俺にはかなり心地いい土地だと感じていた。
「ふふ、そうだろうそうだろう」
ぼそりとそんなことを呟いたら、レーンがニヤニヤしながら満足げに返事を返した。
普段からレーンやルカ、オロン、カンに言わせれば「力こそすべて」みてえな極論しか話題がねえんだが、郷土愛的なもんはいろんな所から感じさせられていた。
今回の移転も、結局はあいつらに諭された部分が大きい。
「こっちがおちついたら、いくつかやらなきゃならない事がある」
「……?」
戦い以外に興味のないレーンには分からないだろうな。
「バヤンに会う」
「な!?」
「今のままでも十分かもしれないが、もっと上手くやるために下地が必要だ」
「……どういうことだ?」
疑問符をそのまま表情にしてレーンが問う。
バヤンってのは、今シェクたちをストーンゴーレムと共に導いている指導者で、シェクの頭脳と呼ばれている人物だ。そんな人物に会って何をしようと言うのか。
俺はレーンの問いを受け流しながら、あえて遠回しに返した。
「なあに、後ろ盾ってやつに気持ちよくなって貰おうとおもって、な」
「?????」
ふふふ、と含み笑いをしながら答えると、レーンはますますわけがわからないと言わんばかりに目を瞬かせた。