15.反撃の布石
まず俺たちは、半壊しつつあったスクインの家を二つ買い、修繕して拠点とした。
近くの鉱山から鉱石を採掘しつつ、基本的な収入減を確保する。
門近くは盗賊からの襲撃を受けやすいので、ボウガンで武装しておいて衛兵に貸し出ししておく。これで一階の店舗もすこしは客足が伸びるだろう。
この二つの家は生産施設として機能する予定だ。
「……んで、こっちが用意出来たら次は……」
「わたしたちの命題の解決策、って所でしょうか?」
鉄板を叩く俺の隣で、基盤を組んでいたマウがふいに声を掛けてきた。
ほとんど独り言だっただけにちょっと気恥ずかしい気分になりながら、俺はにやりと笑みを返す。
「おう。多分、コイツが決め手でバヤンと手を組めるようになるはずだ」
「ふふふ、楽しみですね」
「ああ、でもそのためにもやらなきゃならねえ事が山積みだ」
「でも希望があります。シェクにとっても……」
「……」
マウはシェクでは珍しい頭脳派の女だ。仲間に加わったときも、旧来の脳筋主義とバヤンが進める改革主義とで分かれている状況で、的確に現状と今後に必要な事を理解していた。
ま、頭の悪い俺にだって分かるよ流石に。
「メシがなきゃ死んじまうしな」
食糧問題を種族的な思想が問題で解決できない状況にあるシェクを救うのは、そういうことに気負いのない俺みたいなやつがやればいいのさ。
……そしてそれに加えて、だ。
「ちょっと挨拶にいかねえとな」
俺は遥か北にいるであろう狂信者たちを思いながら、ひとりそうごちたのだった。