16.蠢動
スクインの拠点があらかた仕上がってきたところで、俺は一人でスタックへ向かって走り出した。
仲間の視線に見送られながら、絶壁の町をあとにする。
「いっちょスタックで暴れるか」
バヤンにダメ押しの一手として考えていたこと……。
それは俺が、さらにデカい賞金首になることだ。
そうすることで、すくなくともバヤンではなくその周りの取り巻きたちを取り込むことができるだろうと俺は予想している。
「セトの野郎は超えたい、な」
ヤツは都市連合(UC)に4万Cの賞金が掛けられている。個人的な事だが、ヤツの賞金額を超えるくらいには名を知らしめてやればいいだろう。
聖国(HN)はその教義の特性上、基本的に他のすべての国家と敵対している。この状況を利用すれば俺の目指すべき道も見えてくるってもんだ。
シェクのやつらはそもそも農耕をしたがらない。これは種族全体の問題だからバヤンがどうにかしようと思っても簡単には改善できない問題といえる。
それを解決するには俺たちが農耕を始めることで、共生関係を生めば新しい橋頭保として機能させられるだろう。
「この作戦がうまくいけば、優秀な働き手も仲間にできる」
町を強襲して俺の名を上げるだけじゃなく、さらに聖国に対して気骨のある仲間を手に入れる方法……そのために俺はスタック周辺のある施設の情報を盗賊ギルドから入手していた。