22.足りないもの
「ヴァーグ、本当に可能なのか?」
アドマグを後にして、レーンが帰路に改めてそう聞いてきた。その不安はわかるがちょっとくらいは俺を信用して欲しいもんだ。
「今のままじゃ無理だな」
「な!?」
「策がある。……そういう事なの?」
マウはふと気づいたように、伏し目がちだった顔を上げて言った。マウの言葉でさらに変な声をあげて驚くレーンは、もう少し落ち着いてもいいんじゃないだろうか。
「っても大した策じゃないけどな。完全に俺次第になっちまうから」
ハッキリ言って、俺の陣営にバグマスターとまともにやり合える奴はいない。
そもそもあのストーンゴーレムはおろか、不敗の五忍ともやり合えるのは居ないだろう。俺を含めて。
ただしそれはまともにやり合えば、の話だ。
「ちっと卑怯だが、攫うのは難しくないからな」
盗賊ギルドでさんざ基礎を鍛えた上で、パラディン相手に暗殺技術を磨いた俺にとって手ごわい相手の背後をとることは難しくなくなっていた。ただ、それでも今以上の相手をどうにかするには鍛え方が足りないと感じてはいる。
それを踏まえ、俺は自身を鍛え直すことを話すとともに、探索部隊の編制についても話した。
「遠征部隊の編制はレーンに任せる。俺はもう一回、パラディンどもを狩ってくるからよ」
ビークシングたちが長い首をまわしながら獲物を探す姿を遠目に見ながら、俺はこれから何をすべきかについて改めて考えていた。