21.同盟への試練
「ククク……っはははは! 確かに面白い話だが、我々の事を君は少々誤解している。我々は戦うことをこそ生きる糧としてきた民族だ。食糧事情はたしかに由々しき事態ではあるが、そんなことは些末なことでしかない」
「……」
「……多くのシェクにとって何よりも大切なことは武力でしかなく、またそれ以上でも以下でもない。我々と友諠を結びたいのであれば、相応の力を見せてもらわなければ話にならんな」
同盟の話を持ち出した俺に帰ってきた答えはにべもない物だった。やはりというか彼らは骨の髄までシェクだということだ。そんな彼らを納得させるための答えを、おれは一つだけ懐かしきTheHubの酒場の親父から聞かされていた。
「……バグマスターか」
「ほう、知っていたか」
バグマスター、この世界でその男の名を知らぬものは居ないほどの大物で、各国からその首を狙われている最高額の賞金首であり、また最高クラスの実力者として知られている。
あるものは彼を虫達の神といい、またある者は古代人の生き残りだと呼ぶ。
奴はスワンプ共が住む南の沼地とShekが治める大陸の中央西、ちょうその緩衝地帯には太古の遺跡群が数多く眠る場所がある。南西のArach(アラック)と呼ばれる死の大地に、恐るべき殺人蜘蛛に守られるようにして塔を構えて住んでいると聞く。
酒場に行けばたいていこうした与太話だとか噂話を仕入れることができるが、なぜShekがそれほどまでにバグマスターを敵視しているのかについては、そこまで知られていない。
ぶっちゃけ俺もそこまで詳しくは分からないが、何となく仲間内からの話を総合したところそういう想像に至ったといったところか。
よもやバグマスターも、Shekの子供への躾に引き合いに出されてるとは思ってもいないだろうな。
「いいぜ、狩ってやるよ」
「!」
「ヴァーグ!?」
俺の言葉に後ろの二人が思わず声を上げるが、構わず俺は話をつづけた。
「バグマスターを連れてくればいいんだよな?」
「ははははは! 大言だな。奥さんが聞いたら顔を真っ赤にして怒りそうな話だ」
バヤンは噴き出すように笑い声をあげると、目の端に涙を湛えながら言葉をつなぐ。少々その言葉に憮然としながらも、俺は妄言を吐いているつもりはない。
「大言かどうかはいずれ分かるさ」
「ふふふふ、そうだな。我々には何の損もない話であるし断る理由など微塵もない。気長に待つとしようか」
「お、おいヴァーグ! 何を言っているのか分かってるのか?」
レーンはそんな俺を咎めるように体を寄せるが、それを制しつつも話を進めた。無謀だと言われても仕方のない事だというのは理解している。しかし、こんなことができないようじゃおそらく俺は何物にも成れない。
ついでに……遺跡にも行ってみてえし。
お宝あるかな?