20.同盟
そして二日後。
俺たちは、再びアドマグの領内へとその身を晒していた。
アドマグには指導者が二人居る。
現在最強にして最高の戦士としてストーンゴーレムの名を冠するシェクの王、エサタ。
そして、その王が右腕として才を頼むのは、力ではなく知能であるシェクの未来を担うとされる異能の男、バヤンだ。
シェクの居城には、望めば意外にも簡単に目通りが叶う。
その理由は、インビンシブル・ファイブと呼ばれる5人の屈強な戦士が王とバヤンの身を守っているからだ。彼らはストーンゴーレムに並ぶ豪の者で、その勇猛さで居城の守りを任されている男たちだ。
「……余計な真似はするなよ?」
入口からバヤンの執務室へと向かう最中、不敗の5忍の一人、ジャドからそう言葉を受ける。シェクの奴らは総じて戦闘狂だが、決して無礼というわけじゃない。戦う者同士の礼儀みたいなもんをきっちりと弁えてきたから国として成り立っている。
だから、余計な事をしようものならこの5人が、むしろエサタを含めた6人に囲まれて骨も残らないほどみじん切りにされるだろう。
「必要がないな」
「……フッ」
そうさ、そんな必要はない。小細工はもう無しだ、あとは直接交渉する。
無骨ながらも歴戦とでもいうべき風貌を備えた、宮殿というよりは戦場(いくさば)の本陣のようなこの空気感が、共に歩くレーン、そしてマウの表情を強張らせているのがわかる。
「お前らでもそんな顔するんだな」
「!」
「……ヴァガボンド、私たちには私たちの歴史があるんだ。本質はなかなか変えられるものではないさ」
「……ここから変わる」
驚きのまま少し目を開くレーンと、興味深げに輝かせるマウとの反応の違いが面白い。
「俺たちが変えるんだ」
この腐敗した未来を。