25.戦闘訓練その2
私が選んだメンバーは、以前ヴァーグが編制した戦闘メンバーたちだ。
不思議なことにヴァーグの審美眼はいつも確かで、勝てる相手かそうでないか、そういう部分の嗅覚とでもいうものが驚くほど正確なのだ。
「敵を見定めて全力で叩くだけでは勝てない、か」
シェクの戦い方はそういうシンプルなものが多い。多くは戦闘狂として揶揄される理由ではあるのだが、それもまた仕方ないのかもしれない。
「ですからワシが居るんですな」
そう言ってにこりと相貌を崩すのは、このチームの頭脳を担当しているリーフだ。
リーフはホッブスやアイヌと共にヴァーグの組織を構成してきた古参であり、素早く器用で軽業師のような戦闘技術をもった男として、その多くの戦いに身を投じてきたと聞いている。
なによりも、こと戦術において身軽さを生かした立ち回りでメンバーを誘導し、より優位な戦闘を行うための参謀として働いてくれる。
さらに言えば、今回の戦闘訓練……もとい強化サバイバルの発案者でもある。
「と、いうわけでワシらは付近の砂盗賊を駆除、のちに食料や毛皮の確保もかねてウェスタン・ハイブたちの村をビークシング狩りの拠点として利用しつつ、旅行としゃれ込むわけです」
ビークシングはウェスタンハイブの村が点在するヴェインを中心に生息している肉食獣だ。足が速く見つかれば確実に背後をとられる危険な害獣で、その長い首を使って広域を攻撃してくる厄介な生き物である。
「がしかし、一対一で勝てる実力があればこれほど戦いやすい相手もおりますまい」
ビークシングの攻撃は単調だ。
そのためどのような得物であっても攻撃を受け流しやすく、少なくともダスト盗賊どもをあしらえる程度の腕があれば、一対一でも楽に下せるとリーフは睨んでいた。
「昔はホッブスと二人で一匹が精々でしたがのう、はっはっは」
ビークシングの巣には多くの犠牲になった冒険者の遺物が残されていることも多いと聞く。総合的な戦力の増強と、副産物も得られるのであれば申し分ない。
バックビーストの定期的なサポートを秘密裏に受けながら、私たちの訓練は行われたのだった。